設営の詳細:パレットと廃材の組み合わせ
川沿いの巨木の下に、4枚の古い木製パレットを土台に並べ、その上に廃材の合板を敷いて床を作った。高さは地面から30センチほどで、裸足でも上がれる低いステージのような構造にした。柱には会場の前年から残っていた竹をそのまま使い、麻ヒモと針金で固定していった。屋根はドックフード工場でもらった波トタンを斜めに張り、雨よけと日陰を兼ねるように角度を調整した。カウンターは廃材の2×4材を3本横に渡し、表面に蜜蝋を軽く塗って防水した。
設営中は40度近い暑さで、クルー全員が水を浴びながら作業した。道具は電動ドリル1台とノコギリ2本、インパクトドライバーが1台だけ。釘やビスも廃材から抜いたものを再利用したので、最後までビスの長さが足りずに針金で補強する箇所もあった。完成度は高くなかったが、グラグラせずに20人ほどが同時に乗れる強度は確保できた。特に川風が吹くとトタン屋根がカタカタと音を立て、それがアジアの路地裏の看板のような雰囲気を出していた。
振る舞い酒のメニューとサーブ方法
当日用意したのは、地元の酒販店で買った一升瓶4本と、オーストラリアで手に入る日本酒の小瓶を数種類。純米酒、本醸造、にごり酒を中心に、冷やと常温の2つの温度帯で振る舞った。冷酒は川で冷やした石を入れた発泡スチロールの箱に瓶ごとつけておき、常温のものはカウンター裏の日陰に置いた。器は会場のリサイクルステーションから拾ってきた陶器の湯飲みと、竹を節で切った簡易カップを併用した。
サーブは全てセルフサービス方式で、カウンターに瓶と器を並べ、来た人に自由に注いでもらった。振る舞い酒なので飲み放題、量の制限なし。ただし「自分の器は自分で洗って帰る」というルールだけ看板に手書きで書いた。その看板は廃材の板に白ペンキで「SAKE BAR / Help yourself / Wash your cup」とだけ書いたもの。フォントは適当だったが、夜にライトアップすると意外と味があった。ノンアルコール用に緑茶の冷やしたものもポットで用意し、飲めない人や休憩したい人にも対応した。
夜の風景と来場者の反応
日が落ちると、メインステージの照明が巨木の葉を透けてバー全体に青と紫の光を落とした。我々は廃材で作った小さなランタンにキャンドルを灯し、竹の隙間から漏れる灯りで足元を照らした。すると会場のアート作品を見て回っていた人々が次々と立ち寄り、あっという間にカウンター前は満員になった。ミュージシャンやダンサー、ボランティアクルーまで入り混じり、紙巻きタバコとお香の匂いが混ざる中で、日本酒を片手に川の音を聞く時間が流れた。
特に印象的だったのは、初めて日本酒を飲むという若いカップルが「これはワインより面白い」と言って何度もおかわりに来たこと。また、あるアーティストはにごり酒を飲みながら即興で詩を書き始め、その紙をバーの柱に貼っていった。終盤にはダンスフロアから戻ってきた人々が酒を酌み交わし、知らない者同士が肩を組んで歌う場面もあった。誰一人泥酔せず、むしろ静かに味わう時間が多かったのは、振る舞い酒という形式と川辺の空気のおかげかもしれない。
撤収と次回への展望
フェス最終日の午後、全員でバーを解体した。床のパレットは元の場所へ戻し、竹やトタンは主催者側の倉庫に保管してもらうことになった。カウンターに使った2×4材は、現地のクルーが「次のイベントで使う」と言って持ち帰ったので、廃材がそのまま循環する形になった。ゴミは元々拾ってきた廃材ばかりだったため、新たに出たゴミはキャンドルの残りと麻ヒモの切れ端だけ。着火剤と紐を除けば、会場に残した痕跡はほぼゼロに近かった。
帰り道、主催者の一人から「来年も絶対にやってほしい。今度はもっと大きな場所を用意する」と言われ、クルー全員で笑いながら握手を交わした。個人的には、次回は燗酒も試してみたい。夜の冷え込みでは温かい酒が喜ばれるはずだし、小さな七輪と鉄瓶があれば火を扱うパフォーマンスにもなる。準備期間が3日しかなかった今回の反省を活かし、次は折りたたみ式の棚や照明をもう少し計画的に作れれば、さらに完成度の高いバーになると思う。何より、フェスに来た人々が日本酒を通じて東洋の路地に迷い込んだような体験を持ち帰ってくれたことが、このプロジェクトの最大の成果だった。



