スケールと遠近感 / Scale and Forced Perspective
ジオラマの高さ1m、幅4m、奥行き3.5mという寸法に対して、見る人の視点をできるだけ低く設定した。実際の歩行者が東京の街を見上げる角度に近づけるため、カメラ位置は地面から約40cmの高さを基準にした。建物の縮尺は手前側を約1/80、奥側を約1/150に変えることで、奥行きが実際よりも長く感じられるようにした。低いアイレベルと縮尺の変化により、物理的な奥行き3.5mでも数十メートル先まで街が続いているように見せることができた。
強制遠近法(forced perspective)を用いて、道路の白線やガードレール、建物の窓割りを奥に行くほど小さく描き分けた。特に高速道路の高架とネオン看板は、消失点に向かって幅と高さを徐々に減らし、視線が自然に奥へ誘導されるよう調整した。手前のビルはあえて実寸よりも大きめに作り、奥のビルは小さめに配置することで、撮影時にレンズの焦点距離を50mm前後に設定した際の圧縮効果と相まって、東京の過密な街並みを強調した。
制作中は何度も仮組みとテスト撮影を繰り返し、建物の高さや道路幅のバランスを微調整した。特に交差点付近では、横断歩道の白線の太さを奥に行くほど細くすることで、自然な遠近感を生み出した。この調整は広告用の静止画だけでなく、動画撮影でも違和感が出ないよう、複数のアングルから確認した。
照明と色温度 / Lighting and Color Temperature
未来の東京を昼でも夜でもない薄暮の時間帯として表現するため、建物内部には電球色のLED(約3000K)を、屋外の道路灯には昼白色(約5000K)を、一部の広告看板には青や紫の冷色LED(約6500K以上)を配置した。色温度の異なる光源を混在させることで、近未来の無機質な空気と生活感の両方を一枚の画面に収めた。薄暗い中で窓の明かりが浮かび上がるように、室内灯の明るさは建物ごとに個別に調整した。
光ファイバーを車のヘッドライトや飛行機の航跡に見立て、ジオラマの底面から通して発光させた。金属廃材の表面には艶消しクリアを吹き付け、撮影時の不要な反射を抑えた。光源はすべてジオラマ内部に仕込み、外部照明は最終画像の色味に合わせて最小限に留めた。電源はジオラマの背面に集約し、調光器で各系統の明るさを一括管理できるようにした。
- 電球色LED:建物の窓・室内の明かり
- 昼白色LED:道路灯・駅のホーム
- 冷色LED:ネオン看板・ホログラム広告
- 光ファイバー:車のライト・航空機の航跡
撮影テストでは、色温度の違いが服の色に影響しないよう、最終画像のホワイトバランスを事前に固定した。また、LEDのちらつきを防ぐため、電源には安定化回路を組み込み、長時間の撮影でも均一な明るさを保った。
廃材の選定と加工 / Scrap Material Selection and Processing
使用した木材は建築現場の型枠端材や家具工房のカット屑、金属は自転車のチェーン・家電の基板・アルミ缶・針金などを主に使用した。各素材はまず中性洗剤で洗浄し、油分や埃を除去してから天日で乾燥させた。塗装前にはサンドペーパーで表面を粗らせ、プライマーを薄く塗ることで塗料の密着を高めた。廃材特有の色むらや小傷は、都市の使い込まれた質感として残した。
錆や傷は未来都市の経年変化としてあえて活かし、部分的に銅板を貼って緑青を再現した。木片はカッターと糸鋸で切り出し、角を丸めて紙やすりで仕上げた。接着は木部に木工用ボンド、金属同士や異素材にはエポキシ系接着剤を使い、乾燥時間を素材ごとに管理した。高架道路の支柱には自転車のチェーンを巻き付け、錆止め塗装の上から銀色のドライブラシをかけて金属の輝きを出した。
- 木材端材:ビルの骨組み・足場・屋上看板の土台
- 自転車チェーン:高架道路の支柱・手すり
- 家電基板:ビル壁面の電子広告パネル
- アルミ缶:道路のガードレール・排気ダクト
加工後は組み立て前にすべての部品を再検査し、接着不良や塗装剥がれがないかを確認した。特に屋外広告で使用されることを想定し、輸送中の振動に耐えられるよう、各パーツの固定にはネジと接着を併用した。最終的にジオラマ全体に薄く保護スプレーをかけ、埃や湿気から素材を守る仕上げを施した。
撮影用セッティング / Setup for Photography
WEGOの広告ではモデルとジオラマを別々に撮影して合成するため、事前にスタジオのカメラ高とレンズ画角をジオラマ側の撮影条件と統一した。人物が立つ位置はジオラマ中央の交差点付近に設定し、周囲のビルや道路がモデルの足元から放射状に広がるようレイアウトを調整した。地面の高さは実寸のモデルの足が接地するラインに合わせ、撮影時の合成ズレを防いだ。モデルの影もジオラマ上に再現するため、照明の角度を実際のスタジオと一致させた。
ジオラマは搬入と組み立てを容易にするため、手前・中央・奥の3モジュールに分割した。各モジュールの接合部は道路の白線や建物の影で隠れる位置に設定し、現場で約2時間かけて組み立てた。撮影は背景紙を使わずジオラマをそのまま背景にし、最後に複数枚の露光を合成してハイライトと空の色を補正した。空の部分は撮影後に別途撮影した実際の東京の空を合成し、自然な色合いを加えた。
最終的な広告画像では、モデルの衣服の色とジオラマの照明が干渉しないよう、彩度と明度を細かく調整した。また、ジオラマの奥行きが強調されるよう、手前の建物をわずかにぼかすことで、被写界深度を視覚的に再現した。この一連のセッティングにより、モデルが未来の東京の街角に自然に溶け込む一枚の広告画像が完成した。



