デザインコンセプトとインスピレーション
今回のステージのテーマは「未来の神社」だった。クリスチャン先生と最初に話したとき、彼は「捨てられたものが再び命を持つ場所を作りたい」と言っていた。古い木材や自転車の部品、フレキシブルな金属チューブが組み合わさると、不思議と日本のお社(やしろ)のようなシルエットが浮かび上がる。鳥居の形を抽象的にしたアーチをメインに、中心にはご神体のように再生された廃材のオブジェを置くことにした。高さ10メートル、幅17メートルという大きな規模だったので、遠くから見ても「何か神聖なもの」を感じさせるような佇まいを目指した。
特にこだわったのは、風に揺れる金属チューブの音だった。自転車のスポークを束ねて作った簡易的な風鈴のようなパーツを随所に吊るし、メルボルンの強い風が吹くたびにカラカラと乾いた音が鳴るようにした。夜になるとライトアップで廃材の影が地面に映り、まるで境内に迷い込んだような錯覚を起こさせる仕掛けも考えた。クリスチャンは「未来の神社はテクノロジーと自然の廃墟が混ざった場所」とよく口にしていて、その言葉がデザインの芯になっていた。
徹夜続きの設営プロセス
設営は元旦のフェス当日から逆算して、実質2週間しかなかった。会場の植物園に到着した初日、巨大な輸送コンテナから木材を引き抜く作業だけで半日が消えた。クリスチャンは廃パレットの釘を一本一本抜いて、使える板を選別していく。この地道な作業を手伝いながら、私は高所作業用の足場を組むチームと合流し、メインアーチの骨組みを立ち上げた。廃材は寸法がバラバラなので、設計図通りにはいかない。現場でノコギリを当てながら、その場で微調整を繰り返すしかなかった。
3日目からは完全に徹夜モードに入った。夜中の植物園は冷え込みがきつく、軍手をしていても指先がかじかむ。それでも作業を止められないのは、クリスチャンのアイデアが次々と溢れてくるからだ。「ここに自転車の車輪を溶接して」「あの金属チューブを螺旋状に曲げてみよう」と止まらない。私も夢中になって、気がつくと朝日が昇っていた。結局、最後の2日間はほとんど寝ずに、ステージ後方の壁面パネルと装飾の取り付けを終えた。完成度9割というのは悔しいが、時間切れで止めた部分は正面から見えない場所だったのがせめてもの救いだ。
フェス当日の反応とアクシデント
元旦の朝、ゲートが開くと同時に大量の観客が流れ込んできた。メインステージの前に立った瞬間、あの「未来神社」が青空の下にそびえているのを見て、鳥肌が立った。廃材の茶色や錆びた金属の色が、植物園の深い緑と不思議な調和をしていて、まるでずっと前からそこにあった建造物のように見えた。DJの音が鳴り始めると、ステージの廃材が低音で微かに振動し、吊るした金属チューブが共鳴してカタカタと音を立てた。観客が写真を撮る姿があちこちで見られ、中には「これが廃材でできてるの?」と驚く声も聞こえた。
ただ、想定外のアクシデントもあった。午後になって風が強くなり、左側のアーチに取り付けた自転車の車輪が一つ、溶接部分から外れて落ちそうになった。幸いスタッフがすぐに気づき、ケーブルタイで仮固定して事なきを得たが、もし落ちていたら危なかった。あとから分かったことだが、溶接の熱で金属が歪んでいて、強風の振動で亀裂が入っていたらしい。クリスチャンは「廃材は常に予測不能だ」と笑っていたが、安全面のチェックはもっと徹底すべきだったと反省した。夜のライトアップは大成功で、影がゆらゆらと揺れる様子は本当に神社の境内のようだった。
解体と次のプロジェクトへ
フェスが終わった翌日、私たちは朝から解体作業に取りかかった。建てるのに2週間かかったステージが、わずか6時間で更地に戻っていく。廃材はまた分別され、クリスチャンの工房へと持ち帰られる。自転車の部品はまた別の作品に使われる予定だという。大きな木材の中には、次のインスタレーション用に取っておくものもあった。解体しながら、このステージが二度と同じ形で存在しないことに少し寂しさを感じたが、それもまた「未来神社」の儚さなのかもしれない。
このプロジェクトを通じて学んだことは多い。廃材を使うということは、単に安く済ませるという意味ではなく、一つ一つの素材に歴史と傷があり、それを尊重しながら組み立てる行為なのだと分かった。クリスチャンとの3回目のコラボレーションは過去最高に過酷だったが、同時に最高に刺激的だった。次は4回目のコラボレーションに向けて、新しい会場とテーマをすでに話し始めている。次こそは完成度100%を目指して、もう少し余裕を持ったスケジュールを組みたい。そして、あの風鈴の音をもっと大規模に仕掛けてみたいというアイデアもある。未来神社は、まだ進化を続ける。



